消費税増税に係る経過措置について①請負契約
「消費税増税に係る経過措置等」
① 請負契約
住宅等の建物については工事が長期にわたりますが、いつまでに契約すれば旧税率の適用が受けられますか?長期の請負工事の場合には平成25年9月30日までに契約した請負契約については、引渡しが平成26年4月1日以降になった場合であっても、旧税率(5%)の適用が受けられます。ただ原則として、引渡し日が施行日以降になった場合には新税率が適用されます。
1.概要
消費税法上、請負による資産の譲渡等の時期は、原則として相手方に引き渡した日もしくは役務の全部を完了した日とされています。しかし、消費税の改正に当たっては「駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいこと」などから、指定日(平成25年10月1日)の前日、つまり平成25年9月30日までに契約が行われた場合には、引渡しが施行日(平成26年4月1日)以降になった場合であっても旧税率の5%が適用されることになります。
また、契約後に追加工事等で契約金額が増加した場合については、全体が新税率の適用を受けるわけではなく、増額分の金額のみが新税率の適用対象となります。
この経過措置の適用を受ける場合には契約の相手方に対し、旧税率の適用を受けたことを「書面(契約書や請求書等)」で通知しなければなりません。
2.対象となる契約
対象となる契約は幅広く、
- 建築請負契約
- 製造請負契約
- 測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計
- 映画の制作
- ソフトウエアの開発
- その他の請負に係る契約(修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、情報提供、検査・検定等の事務処理、市場調査)
等が対象です。「仕事の完成に長期間を要し、かつ、当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているもので、契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの」とされていますので、対象は建築契約に限らないこととなりますが、目的物の引渡しを要しない、例えば月極めの警備保障契約、メンテナンス契約や清掃契約は当該経過措置の適用対象外となります。
3.住宅・賃貸住宅建築の留意点
特に、個人の住宅や賃貸住宅物件の建設については、消費税部分が還付されず、自己負担になってしまうことが考えられ、経過措置の適用を受けられるかどうかが非常に重要になりますので、経過措置の適用を視野に入れ早めに検討に入ることが大切です。特に指定日近辺になると駆け込み需要等が発生し、建築会社やハウスメーカーの対応が間に合わず、経過措置が受けられなくなる事態も想定されます。
また、慌てて契約を結びその後変更等があった場合には、契約全体が経過措置の対象外になったり、契約の追加分等が経過措置の対象外になったりと、税率引上げにより負担増になることが考えられますので、追加変更がなるべくないように十分な余裕・検討期間をもって契約締結をすることが大切です。
4.リフォーム・修理・大規模修繕も経過措置の対象
請負契約の経過措置の取扱いは2に記載の通り、建築の請負契約にとどまりません。 住宅関連であれば、
- リフォーム
- 修繕
- 改修工事
等も対象となります。
自宅のリフォームやバリアフリー等の改修工事、自宅や賃貸物件の修繕・大規模修繕等の工事も該当しますので、特に期間が長くなるような大規模修繕等では早めの計画と契約が重要になります。
5.マンション購入の場合の留意点
一般的な分譲マンションの購入の場合には、請負契約ではなく資産の譲渡契約となりますので上記の経過措置の適用は受けられません。
しかし、建売住宅やマンション等の建物の譲渡に係る契約であっても、建物の内装・外装・設備などに注文工事がある場合には、経過措置の適用対象になります。特別な注文等が無い場合には請負工事ではなく、単なる完成物の引渡しとなり、経過措置が受けられないことが考えられます。
また、特別な注文というと、ある程度大規模な工事をイメージすると思いますが、「壁の色又はドアの形状について特別の注文を付すことができるものも含まれる」(国税庁「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)」)とされていますので、かなりのケースで経過措置適用が可能だと思われます。
6.工事進行基準を採用している場合の留意点
法人税・所得税の計算において工事進行基準を採用している場合には、原則として消費税における売上げも法人税・所得税の収入計上時期に合わせることとなっていますが、指定日の前日までに契約を締結している場合は、この経過措置の対象となり、旧税率を適用できると考えられます。
指定日から施行日の前日までに締結した契約については、着手日から施行日の前日までの間は
で算出される額が旧税率を適用できると考えられます。